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フォレストシンガーズ・短歌俳句超ショートストーリィ2019/9

フォレストシンガーズ

2019/9

 あれマツムシが鳴いている
 チンチロチンチロチンチロリン

 こんなシーンを描いていると、耳元にこの歌が聴こえてくる気がする。夏の終わり、秋のはじめ、人は虫の音で季節を知ったりもする。

 百年以上も昔だったら、自然は豊富だっただろう。
 京都伏見といえば田舎ではなかったはずだが、今ごろの季節には虫たちが大合唱をしていたはず。静かな夜に坂本龍馬が伏見の船宿で、恋仲のおりょうさんの膝枕で虫の音を聴き、おりょうさんがそっと口ずさむなんてどうかな?

「あれ、この歌、幕末にあった?」
「ないだろ。小学唱歌って明治時代に作られたんじゃないのか」
「そうだよね、残念」

 今夜はヒデさんが泊まりにきている。彼は歌には詳しいので、質問してみた。

「幕末のころ、こんなシチュエーションで口にする歌かぁ。都都逸とか?」
「都都逸ってどんなの?」
「三千世界の烏を殺し……は高杉晋作だよな。三津葉だったらどんな都都逸を知ってる?」
「んんと……知らない」

 いまだガラケーを使っているヒデさんは、誰かにメールを打っていた。ややあって、届いたのは乾さんからの返信。この季節の歌といえば……だそうだ。
 
「夜をかさねはたおる虫の急ぐかな草のたもとの露や冴ゆらむ」定家
 
 乾さんらしい返事だけど、坂本龍馬に定家の歌は似合わない。もっと俗っぽいのないかしら? あれは、これは? とヒデさんと言い合っているのは楽しいから、答えなんかなくてもいいんだけどね。

END

 

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