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フォレストシンガーズ・短歌俳句超ショートストーリィ2019/8

フォレストシンガーズ

超ショートストーリィ


 なんの気なしに如雨露を手に取ろうとしたら、息子の広大の黄色い声が降ってきた。

「駄目っ!! ダメダメっ!!」
「え? どうして? ああ、そっか。うんうん、駄目だな」

 マンションのベランダで、妻がささやかな花を育てている。いくつか並んだプランターの植物には、いつもは妻の恭子が三歳児の広大と一緒に水やりをしていた。

 今日は恭子が次男の壮介だけを連れて出かけているので、休日の繁之は広大とお留守番だ。たまには水やりでもしようかな、と如雨露を取ろうとして広大に叱られた。どうして駄目なのかよ確認してみたら、そういうことか。繁之は如雨露を持ち上げるのをやめて、部屋の中から小さな手桶を持ってきた。

「この朝顔、広大のなのか?」
「そうだよ。管理人さんのおばあちゃんがくれたの」
「そっか。大切にしてるんだな」
「綺麗でしょ?」
「うん、すごく綺麗だね」

 花を愛する情感豊かな子どもに育ってくれたのは、きみのおかげだよ、恭子。繁之は妻に感謝しつつ、自身の子どものころを思い出していた。

「小学生になったら夏休みに、朝顔を育てて朝顔日記ってのを書くんだよ。パパが小学生のころにはそんな宿題があったけど、今どきでもあるのかな」
「ぼく、あさがおにっき書く」
「うん、あとで一緒に書こうか」
「うんっ!!」

 ここで一句、と乾さんならやるんだろうけど、俺には無理だな。
 だけど、なにやら浮かんできそうな。んんんん、んん。

「朝顔につるべ取られてもらい水」加賀千代女

 いや、これはモロ他人の作じゃないか。俺にこんなにうまい句が詠めるわけがない。
 ベランダに置いてある如雨露に朝顔の蔓がからみつき、使えなくなっていた。これぞまさしく現代の、朝顔につるべ取られて……だ。やっぱ俳人って情景を短く切り取るのが上手だよな。見習わなくちゃ、と感じるのもおこがましいほどに。

END

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