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2019年7月

200「200字小説」

しりとり小説

200「200字小説」

 フォレストシンガーズストーリィにちょっとだけ出てきた、脇役の中の脇役を主役にしたショートストーリィを、と決めてスタートしたのですが、じきに主人公がいなくなってしまって、いつの間にやら「いやな女」「変な奴」メインの小説集になりました。

 あ、わ、こんなの小説になってないな。と反省しているのは著者になりかわった三沢のユキってことで。語り手が架空の人物なのだから、小説ですよね。嘘ぉ、俺、架空の人物じゃないのにな。


注:200編記念はこんなのになってしまいました。(^^;)
  201話からはもとに戻って、次は「こん」です。

                                                                                                                
                                                                                             

 

ガラスの靴53「告白」

「ガラスの靴」

     53・告白


 同じマンションの別フロアで夫と息子との三人で暮らしている専業主夫友達、美知敏。通称はミチ。彼は男だから「主夫」なのだが、夫も男で、息子は夫と前妻の間に生まれた子どもだ。僕も同じく「主夫」ではあるが、妻は女性で、息子は妻の産んだ子供。僕のほうがややこしさは少ない。

 吉丸さんちでミチと、息子の来闇、僕と息子の胡弓の四人で遊んでいて、二歳のライアンと三歳の胡弓はお昼寝をしてしまった。ミチと僕は息子たちを見守りながらお喋りをしていたので、喋るのにも倦んできて半分は居眠りをしていた。

「はーい」
「お客さん?」
「お客の予定はないけどね」

 チャイムの音にミチが立っていき、美少年を伴って戻ってきた。

「来るんだったら先に電話でもして、約束してからにしろって言ってるのに、リルはこうして突然来るんだよ」
「暇だったんだったらいいじゃん。笙くん? こんにちは。僕、リル」
「リルっていうの? ハーフ?」

 色白で可愛い顔立ちで、ハーフに見えなくもないが日本人だそうだ。ミチの高校時代の後輩で、本名は理流稀。リルキと読む。ライアンなんてフツーじゃん、って感じの変わった名前だ。

「後輩って、ミチは部活とかやってたの?」
「うちの高校は部活は必須だったから、やってたよ。僕は二年で中退しちゃったから、リルとは一年しかつきあってないけどね」
「なんの部活?」
 
 アニソン研究会だそうだ。ミチはリルのためにコーラを取りにいき、リルが高校時代の話をしてくれた。
 高校の部活で知り合ったミチ先輩は、間もなく高校を退学してしまう。リルはミチが好きだったので、ミチのアルバイト先を突きとめて会いにいった。

「あ、僕はゲイじゃないからね。友達として好きなんだよ」
「うんうん。それで?」
「それで、僕もミチくんがバイトしてた店で働いたりもして、僕も高校は中退しちゃったんだよ。勉強なんか嫌いだから、お水の世界に入るほうがいいつもりだったんだけど、親がうるさくてさ。バイトだったらまだいいけど、バーなんかに就職したら駄目だって」

 高校中退のリルが一般の会社にもぐり込めたのは、父親のコネがあったかららしい。リルのお父さんは建築事務所を経営していて、取引先の会社に息子を押し込んだ。

「最初はパシリだったんだけど、経理の資格を取ったから、今はこれでも経理マンなんだよ」
「へええ、すげぇ。えらいんだね」
 
 二十歳にしてリルはまっとうなサラリーマンなわけだ。僕にはとうていそんな暮らしはできないけれど、ぱっと見とはちがうリルを尊敬してしまった。そこに戻ってきたミチが尋ねた。

「で、今日はなんか用事?」
「僕、告白されたんだ」
「女に?」
「そうだよ。僕はゲイじゃないんだから、恋は女とするんだよ」

「こいつ、オクテなんだよね。初恋なんじゃないの?」
「初恋ではないよ。今の会社に就職してから、ふたりぐらいはつきあったかな」
「僕に言わなかったじゃん」
「遊びだったからね」
「だったら、今度は本気?」
 
 力強くうなずいて、リルは話した。

 その時どきでリルにはマイブームランチがある。最近はドーナツなので、職場近くのドーナツショップへ毎日通い詰めていた。
 毎日毎日行っていると顔なじみの店員さんができる。そのうちのひとりの女性に、待ち伏せされて告白されたのだそうだ。

「私、三人ほど好きな男性がいるの。あなたに断られたら次を当たるから、好きか嫌いかはっきりして」
「ええ? そんないきなり……」
「私は気が短いのよ。はっきり決めて」
「考えさせてもらえない?」
「駄目っ!! 決めて」
「ううう……」

 悩む間も与えてもらえなかったので、リルは勢いでうなずいた。

「言っておくけど結婚前提よ。私は遊びの恋はしない主義なの。もう四十歳もすぎてるんだから、さっさと結婚してさっさと子どもを産みたいのよ。私とつきあったら一年以内に結婚するよ。いいね?」
「はい、結婚します」

 そこまで聞いて、ミチと僕は同時に疑問を口にした。四十すぎてる?

「そうだよ。稟子さんは四十二歳なんだ」
「すっげぇ美人?」
「えーっと、でも、ドーナツショップって……あ、オーナーだとか?」
「ううん。アルバイト。写真があるよ」

 大切そうに見せてくれたリンコさんの写真は……。普通のおばさんだった。

「リンコさん、言ってたよ」

 告白の前に、リンコさんは友達に相談したのだそうだ。二十歳の美少年と三十代の美青年と、四十代のかっこいい中年、お店に来るお客の中でお気に入りが三人いる。どの彼に告白すべき?
 複数の友達は異口同音に答えた。

「二十歳に告白なんかしたら犯罪よ。三十代もあんたには無理。身の程を知りなさい。四十代だったらまだしもだけど、かっこいいんでしょ? 無理だね」

 そう言われて意地になって、三人ともに告白することにした。手始めに当たって砕けるつもりだったリルが大当たりだったので、あとのふたりはやめにして友達に報告した。

「……嘘でしょ。だまされてるのよ」
「リンコ、目を覚ましなさい。その子、あんたをからかってるんだよ」
「そうじゃないんだったらリンコの妄想だよ」
「そうかもしれないね。医者に行こうか?」

 友人たちの言い草に、リンコさんも不安になってきたらしいと、リルはふふっと笑った。

「リル、ほんとにリンコさんの友達が言ってる通りなんじゃないの? おまえ、リンコさんをからかって、告白だの結婚だのにうなずいておいて、どこかでどすっと落とすつもりだろ」
「僕があなたにそんな気になるわけないだろ、とかって? 罪だよ、リル。そんなふうにするくらいだったら、最初からお断りしろよ」

 いいや、本気だよ、とリルは頭を振り、ミチと僕は言いつのった。

「ちょこっと遊びでつきあってみるだけだったら、まだわかるけどさ……」
「しかし、リルだったらこんなどこにでもいそうなおばさんとつきあわなくても、可愛い若い子が遊んでくれるだろ」
「二十歳のニートとかいうんだったらしようがないけど、一応はちゃんと働いてて、収入だっていいほうなんじゃないか。なにを好き好んでこんなおばさんと……」
「第一、告白されるまでは意識もしてなかったんじゃないのか?」

 だからこそ、運命を感じたんだ、とリルは言った。

「このおばさんと結婚するんだよ? できるの?」
「ってか、もう寝たの?」
「まだだよ。リンコさんは純情可憐な乙女なんだから、結婚式をすませて新婚旅行に行って、そのときに初夜ってのが夢なんだって。僕もそのほうがいいな」
「新婚旅行や結婚式の話もしてるの?」

 もちろん、とリルはこともなげにうなずき、ミチが質問した。

「親には許しをもらったの?」
「僕は成人してるんだから、親の承諾なんかなくても結婚できるよ」
「けど……あとあと……」
「ミチくんだって親には適当にごまかしてるくせに」

 それを言われるとぐうの音も出ないってやつなのだろう。ミチはうなだれた。
 このふたりの親は田舎で暮らしている。ミチが言うにはろくな高校もない田舎だから、中学を卒業して上京したのだそうだ。リルも似た境遇なのだから、親とは同居していない。内緒で結婚するってこともできるわけだ。

「リル、血迷ってないか?」
「冷静に考え直したほうがいいよ」
「ミチくんも笙くんも、頭の固いおばさんたちと同じなんだね。失望したよ」
「ったって世間の常識が……」

 言いかけたミチを、僕は肘でつついた。その台詞が似合わない最たる人物はキミだよ、ミチ。

 このふたりと比較したら、僕なんかは平凡で常識的だ。僕は男として女性と結婚し、普通に子持ちになった。主夫程度のなにが変なんだろ。親にとってはミチやリルみたいのよりも、僕のほうが一億倍も親孝行息子なはずだ。

つづく


 

 

フォレストシンガーズ・短歌俳句超ショートストーリィ2019/7

フォレストシンガーズ 超ショートストーリィ

 
 その歌の解釈を教えて下さい、と頼まれることはよくある。
 フォレストシンガーズの乾隆也は古典文学を大学で専攻した、特に短歌や俳句が得意分野だと、フォレストシンガーズが有名になるにつれ、そちらも有名になっていったからだ。

 グループとして、であるので、個々のメンバーはさほどに有名ではない。ファンではない人に言わせれば、フォレストシンガーズに乾隆也っていたっけ? 程度であるのだが。

「この季節にふさわしい、ぴったりの短歌を教えてください。乾さんの自作だと嬉しいな」
「いや、そんな即興では詠めませんよ」

 こちらの頼みもよくされる。
 
 梅雨明け間近の七月のある日、雑誌のインタビューを受けていた隆也は、そう言われて考え込んだ。七月の短歌……あまりにも有名ではないものといえば。

「日かげにもしるかりけめや少女子が天の羽袖にかけし心は」
「えーと、出典は?」
「源氏物語です。五節の舞姫」
「はあ……意味は? 恋の歌ですか」
「解釈はあなた自身のお心のままに」
「えーっと……も、しるかりけめや? えとえと……」
「感覚で解釈して下さいね。ひとつひとつの語句の意味は置いておいてもいいんですよ」

 定番の質問には定番の答えで。

END

ガラスの靴52「安売」

「ガラスの靴」

52・安売


 音楽で食っていかれる保証はないから、こっちにも才能があるつもりだったイラストの勉強をすることに決めた、二十五歳のあたし。専門学校のイラスト学科に入学して笙と知り合った。

 結局はロックバンドのヴォーカリストとしてプロになったのだが、笙とは結婚して、彼には主夫をやらせている。あたしは家で主婦業と母業をやっていられるような性格ではないので、主夫としてのほほんと生きているのが性に合う男と知り合ってよかったのだ。

 専門学校時代には他の生徒よりもだいぶ年上で、とんがった服装をして、変な噂もふりまかれていたあたしは敬遠されていた。お気楽なガキどもとなんか友達になりたくないから、ひとりでもへっちゃらだったのだが、ひとり、ふたりくらいは友人もいた。

「おや、縫?」
「あらま、アンヌ?」

 男とは友人ではなく、セフレってやつになったのだが、女とだったら友達にもなる。彼女はあたしよりひとつ年上で、専門学校生としては年を食っていた。そのせいもあり、性格もいっぷう変わっていたからあたしと気が合ったのだ。

 ヌイとはあたしの世代には珍しい名前だ。アンヌもありふれた名前ではなく、名前の話をしてから親しくなったのだった。

 その縫と再会したのは、音楽スタジオ。縫は音楽スタジオと取り引きのある会社で働いていると言う。なんの会社だかは教えてくれなかったが、そんなことはどうでもいい。飲みにいこうぜ、と誘って、二、三度旧交をあたため合った。

「笙くんねぇ、あんまり記憶にはないけど、アンヌは年下の男の子と結婚したんだ。しかもロックバンドのヴォーカル……桃源郷って名前だったら知ってるよ。んで、笙くんは主夫。かーっこいい。勝ち組だね」
「主夫を養ってる女って勝ち組か? 金持ちの男に寄生してる主婦のほうが勝ち組だろ」
「アンヌにはそんな主婦、向かないんじゃない?」

 よく知っている。そりゃあまあ、旧友なのだから当たり前か。
 夫が主夫で子どもも夫が主になって育てていると言うと、眉をひそめるむきもなくはない。旦那さんがかわいそうと言われたり、そんなヒモ、ろくでもない男だろうと言われたり、母がちゃんと育てないと、子どももろくでもない男になるよと言われたり。

 他人は好き勝手言ってくれるものだが、縫のようにかっこいいと言った女は少数派だ。こういうところが縫と友達になれた部分なのだろう。

「縫は男は?」
「去年、プロポーズされたんだけどね……」
「結婚したのか?」
「してないよ。断ったの」

 三度目にふたりで飲みにきた酒場で、縫は浮かぬ顔になった。

「重大な瑕瑾があったんだよ」
「かきん? 傷ってことか」
「そ。背が高くてかっこよくて、いい大学出てていい会社で働いてて、性格もいい男だったのよ」
「そんな男がよくも、あんたに惚れたね」
「まっ、失礼ねっ!!」

 怒ったふりをしてみせてから、縫は大きく息を吐いた。

「だけどさ、その大きな重すぎる傷のせいで、私はあいつのプロポーズを蹴ったの」
「なんの瑕瑾だか知らないけど、断ったんだったらしようがねえな」
「うんっ、もうっ、冷たいね。聞いてよ」
「話したいんだったら話せよ」

 もったいつけずに言えばいいじゃないか。あたしはウィスキーを飲み、縫はカンパリを飲んでいた。

「そんな男なんだけど、私にふられて傷心状態で、もう二度と恋なんかしないって言ってたんだよね。そうなのかもしれない。あんな傷もの、私じゃない女だってきっと断るだろうと思ってたの」
「傷ものって、暴走族のレディスにでも輪姦された過去があるとか?」
「アンヌ、真面目に聞け」

 すこし酔ってきたのか、縫の目が据わってきていた。

「なのにね、ついこの間、会ったのよ。彼とは社内恋愛だったから、居づらくなって私が会社を辞めたのね」
「ああ、そうだったのか。転職してたんだ」
「そうよ。惜しまれつつも私は転職したの。だけど、私はみんなに慕われてたから、その会社の女の子たちともつきあいが続いている。先だって前の会社の女の子たちと飲みにいったのね。そしたら、彼も女の子たちについてきたんだよ。私に未練があったんだろうね」

 そうなのかもしれない、別の理由があったのかもしれない。

「彼は私に言ったの。俺は二度と恋はしないつもりだったよ。恋はもういい。だけど、結婚はしたくなくもないんだ。恋はしなくても結婚はできる。近く結婚が決まりそうなんだ。縫、後悔しないかって?」
「なんだ? それが言いたくて縫に会いにきたのか?」
「そうなのね。彼、私に未練たっぷりで、他の女となんか結婚しないでって言わせたかったんじゃないかと思うんだ」

 というよりも、見せびらかしたかったのだとあたしは思うが、あたしはそいつではないので真意はわからない。縫は切なげに続けた。

「今ならまだ間に合うよ、婚約破棄だったらできるんだから、縫……って、私を見つめるの。だけど、冷静に考えたらあいつには瑕瑾がある。私はそんな男とは結婚できない。そんな男と知っていながらあいつと結婚する、その女みたいな安売りはしたくない」
「安売りなのか」
「そうだよ」

 据わった目をして断言する縫に、もう一度尋ねた。

「瑕瑾ってなんなんだよ?」
「奨学金よ。彼は医者志望で、医学部に入って六年間勉強するにはとうてい親のお金では無理だからって、諦めてくれって親に言われたらしいの。それでも絶対にやるって言って、奨学金を借りたんだって」
「そいつ、医者?」
「医者になれたんだったらまだいいけど、途中でリタイアしたのよ。医学部の勉強についていけなくなって、四年生で別の大学に編入したの。それでよけいに金がかかったんだよ」

 奨学金の返済をせねばならないから、毎月、かなりの金が出ていく。それを瑕瑾だと縫は言うのである。

「てめえにゃ関係ない金が、男のふところから出ていく。それって気に入らないかもしれないけどさ、そいつはいい会社で働いてるんだろ」
「借金持ちの男なんていやだよっだ」
「ギャンブルで作った借金とかじゃないんだろうが」
「アンヌらしくもない正論を吐かないで。借金は駄目。絶対にいや」

 自らの勉学のために借りた奨学金を、自ら働いて返す。けなげではないか、とあたしは思う。あたしだって中退した大学も、専門学校も自分で稼いで通った。

「息子に借金させる親も親だよ。そんな親がいるってだけでもいや」
「……そういうもんか。あんたとはそんなに価値観がちがうんだ。びっくりだね」

 大人にならないとわからないこともあるものだと、あたしは今さら知った。ある程度は援助しても、あとは自分でなんとかしなさいと奨学金を借りさせる親。親の勧めに従って借金をして、きちんと働いて返していく子。それのどこが悪い。どこが瑕瑾だ。

「だけど、惜しいのは惜しい。私は安売りなんかできないけど、そんな男は簡単に結婚できないだろうと思ってたの。あいつが奨学金を返し終わったら、もう一度プロポーズしてくるかとも思ってたのよ」
「……あてがはずれて残念だったね」
「なによ、アンヌ、言い方がつめたいじゃない」

 いつまでも友達でいようね、なんて、あたしはそんなきれいごとを言ったこともないけれど、学生時代の友達とは続いていけると思っていた。旧友だからこそ、こうして久しぶりに会ってももと通りになれると喜んでいた。けれど、錯覚だったんだ。人はこうして、友達をなくしていくものなのか。

つづく


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