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フォレストシンガーズ・短歌俳句超ショートストーリィ2019/6

FS俳句短歌超ショートストーリィ

 

「風あざみってほんとにあるんだと思っていたよ」

 

 ふいに誰かの言った台詞を思い出した。風あざみ? 「少年時代」という歌に出てくるあれか? ほんとにはない花なのか?

 

「ああ、シゲだな、風あざみってどんな花ですか、って訊いたのは。ミエちゃんと俺が架空の花だって言ったら、本橋も感心していたよ」

 

 大学時代の先輩と後輩で結成した五人グループ、フォレストシンガーズの中では乾隆也のみが花の名前に詳しい。マネージャーの美江子は女性なのだから当然、花の名前をよく知っている。女性は花の名前を熟知していて、男性はそもそも興味がないというのが、小笠原英彦の無意識的見解だった。

 

 なのだから、花の名前に詳しい隆也は女性的な男、と、英彦の見解ではそうなる。実際には隆也の祖母と母が華道家であるかららしいのだが、華道家にはいかにも女性的な職業で、乾さんも跡を継いだらよかったのに、短歌や俳句に詳しいってのも華道家としてはふさわしいんじゃないか? と英彦は思っていた。

 

「さしずめこれは、雨あざみだな」
「雨あざみ?」

 

 アマチュアながらも時には歌える仕事をもらえることがある。今日は地方のイベントにフォレストシンガーズが出演させてもらい、自由時間に英彦は隆也と散歩していた。山道に見つけたあれがあざみの花だと、隆也が暗い赤紫の花を指さす。

 

「口をもて霧吹くよりもこまかなる雨に薊の花はぬれけり」長塚 節

 

 たしかに細かな雨が降っていて、非常に非常にタイムリーな短歌を隆也が口にする。
 しかし、うーん、やっぱり……乾さんって男じゃないみたいだ、と、英彦はどうしても思ってしまう。

 

 男同士で歩いているこのシチュエーションで、雨あざみだの短歌だのって、俺だったらぜーったいの絶対に頭にも浮かばない。だからあんたは男だとは思えんのやきに……先輩相手には面と向かって言えないフレーズを、英彦は雨にまぎれて呟いてみた。

 

HIDE/21/END

 

 

 

 

 

 

 

 

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