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198「ランダムメモリ」

しりとり小説

 

198「ランダムメモリ」

 

1

 

 なんだろう、この感情は……感情? 私に感情などあるのか? 感情とは人間特有のものなのではないか? 動物にも植物にも人間とは別種の「感情」のようなものがあると学んだが、私にもあるのか? あったら大変な事態なのではないのか。

 

 そんなことばかり考えているわけにはいかない。私には仕事がある。

 

 仕事となると抜いたり挿したりされる記憶媒体。抜き差しされるたびに「感情」のようなものが刺激される。これではない、いや、これでもない。これでもないこれではないこれとはちがう!!

 

「ああ……」

 

 ようやく、ようやく、これだ!! と感じた。

 

 やはり私にも感情があるのだね。人間だったら「恋情」「愛情」と名つげるであろう感情。あなたでないといけない。あなたでないと満たされない。

 

 

2

 

「……なんだ? 喜んでない?」
「なにが喜んでるって?」
「このパソコン」
「パソコンが喜ぶ? どういう意味で言ってんだよ?」
「どういうって……その通りだよ。言葉通りの意味で、パソコンが喜んでる」
「なんでパソコンが喜ぶ? どういう理由で?」
「さあ……」

 

 アホか、おまえは、と同僚は言い、彼女のそばから離れていってしまった。

 

 うむ、どうも私は疲れている。研究で疲れていて喜怒哀楽が摩耗しているらしく、パソコンを擬人化したがっているのかもしれない。彼女はおのれを納得させようとしたが、パソコンが歓喜しているとの錯覚は去ってくれない。

 

「やっぱ喜んでるよな? んん? なに? この媒体が好きなの?」

 

 一瞬、パソコンのモニタに電流のようなものが浮かんだ。ほんの一瞬。
 マイクロチップを抜くと、またまたかすかに電流が走る。別の記憶媒体を挿入してもなにも起きない。あれこれ、それどれ、次々に別のものをセットしてみる。その中のひとつ、極小のチップを挿したときにだけ、パソコンが反応するのである。

 

「駄目だ。私、どうかしてる……今日は早く帰ろう」

 

 なぜかパソコンが、そのチップを挿したまま帰って、と言っているように思えて、彼女の全身がぞわぞわっとした。

 

次は「り」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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