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フォレストシンガーズ・短歌俳句超ショートストーリィ2019/3

FS俳句短歌超ショートストーリィ

2019/2

 菜の花列車に乗って適当な駅で降りて、猫に導かれて歩いていた不思議な経験。房総半島の内陸部には、黄色い菜の花がたくさんたくさん咲いていた。

 どこかで見たことあるなぁ、誰だっけ?
 猫に導かれていった民家の女の子は、幸生をそんな目で見ていた。猫は相手を、自分の知り合いか否かでだけ判断するのだろうが、人間の場合、こっちが知らなくてもむこうは知っているってことも間々ある。

 フォレストシンガーズの三沢幸生です、なんて名乗らずに、幸生は歌を歌った。

「菜の花畑に入日薄れ
 見渡す山の端 匂い淡し」

 歌、うまいね、今度は女の子はそんな目で幸生を見た。
 そりゃそうですよ、俺はプロの歌手だもの。そうとも言わずに女の子と猫とバイバイしてきて、ひとりで歩く帰り道。月がぽっかり、菜の花畑のむこうに顔を出した。

「歌手ってのはソングのほうであって、短歌のほうじゃないんだけどね……こういうときに一句か一首、すらすらっと詠めたらかっこいいんだけどな」

 ひとりごちて頭をひねる。頭をひねって句か歌かをひねってみたくて。
 ……お!!

「菜の花や月は東に日は西に」

 おおお、うまいっ!! 俺、天才!! 最高の俳句が詠めたじゃん。

「幸生、そいつは盗作だ。いや、盗作ではない、そのまんまだ」
「へ? そう?」
「与謝野蕪村だよ」
「与謝野晶子さんじゃなくて? 蕪村って男でしょ。女のひとのほうがいいのにな」
「ごまかすな。それはナシ」

 そっかぁ、頭の中に聞こえてきた声は乾さんのものなんだから、この話題に関しては乾さんの言うことにまちがいはないんだから、ナシだな、ナシナシ。

 では、もう一度……と苦吟してみたが、いくらひねってみても、月は東で太陽は西だ。あげくのはてには、西から上ったお陽さまが東へ沈む、なんて、どこかで聞いた歌詞になってしまうのだった。

END

 

 

 

 

 

 

 

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