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フォレストシンガーズ・短歌俳句超ショートストーリィ2018/8

フォレストシンガーズ

超ショートストーリィ


 絵のように光景が浮かぶ短歌や俳句、その代表、とはいってもそんな歌や句は多々あるが、そのひとつはこれだろう。

「ひまわりは金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ」 前田夕暮

 油? 隆也のかたわらで首をひねった娘がいた。

「金の油ってなんですか? ひまわりってことはひまわり油?」
「ひまわり油はたしかに金いろをしているね」
「黄色ってかゴールドってか、油はそういう色だよね? オリーブオイルは緑かも」
「茶色の油もあるよね」

 ごま油は茶色、ラードやヘッドは白。いつの間に油の色についての話題になっていた。
 世の中にはこういうものをシンプルに味わえない人間がいるんだな。きみ、天ぷらの食べ過ぎじゃないの? 頭の中にまでオイルが回ってるんじゃないの?

 彼女の言葉のせいか、どうしても油のほうへと頭が回ってしまう。そうではない、そうではないのだ。

「じゃあ、なんの話ですか?」
「ひまわりの短歌だよ」
「ひまわりってなんですか?」
「……」

 これはどうにもお話にならない。

 長年のつきあいであるフォレストシンガーズのメンバーたちも、隆也以外は花の名前を知らない。真次郎などは、男のくせに花の名前を知ってるなんて異常だ、とまで言う。祖母が華道家だったので、隆也は小さいころから祖母に教えられてきた。花の名前を墨で半紙に書くという勉強もしてきた。

 女の子なのにひまわりも知らないのか? とは差別だろうか。男が花の名を知らなくても苦笑ですむが、女性が知らないとびっくりになる。

 単独仕事で訪れた、夏の草原。ひまわりをバックに隆也がギターを弾き、歌うシーンがある。ああ、あのひまわりがいいな。録画は日の高い正午ごろに行われる予定だから、この短歌はぴったりだな、と隆也が口ずさむと、ひまわり油? などと横から尋ねた共演者の女の子がいたのである。

「じゃあ、ひまわり油ってなにからできてると思ってたの?」
「……油って工場で作るんじゃないんですか? んんと……石油とか。石油も油だよね」
「ごまは?」
「ごまはセサミでしょうに。乾さんったらそんなことも知らないの?」

 私、料理が得意なんですよ、と彼女は無邪気に微笑み、そう、がんばってね、と隆也としては応えるしかない。
 そんなふたりを見下ろす、丈の高いひまわりと、さらに高みにある太陽。

END

 

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