①ステファニー・メイヤー「トワイライト」
かの有名なベストセラーですね。友人がどさどさっと9冊貸してくれて、開いてはみたものの。
まず、この翻訳文体が駄目。読んでいるとイライラする。隔靴掻痒みたいな感じで、リズムが決定的に合わない。内容も無心で楽しめない。
のっけからこんなに男の子にもてまくる女の子が、都会にいたときには運動音痴コンプレックスで冴えない女の子だったって? そんなはずねーだろ、なめとんのか!! と怒ってしまって、一冊読み終えてギブアップしました。
こういうのは世界に入り込まないと駄目ですね。貸して下さったYさん、ごめんなさい。返してくれなくていいよ、って言ってくれたけど、図書館に寄付していい?
②馳星周「エム M」
この方のお名前は存じていましたが、こんな小説を書くんですね。はじめて読んでちょっとびっくりでした。
ハードな鬼畜小説とでもいうのか。私は平気ですけど、世の中の純情なお坊ちゃまやお嬢さまや奥さまはお読みにならないほうがいいと思います。
結婚したまではよかったものの、妻の出産も家を買ったのも不本意で、生活に鬱憤が積もり積もっている男。そんな彼の近くに妻の妹があらわれ、彼女への妄執がエスカレートしていく。
伝言ダイヤルでアルバイトをしている主婦がひっかかった、こわーい男。写真を撮られるは、覚醒剤を注射されるは……堕ちるところまで堕ちていく。
といったストーリィばかりです。それだけに刺激的で、すごかったけどね。
③貫井徳郎「空白の叫び」
少年法が改められる以前、三人の中学生が各々の事情から身近にいる人間を殺してしまう。彼らは少年院で出会い、出所してからも関わっていく。
彼らが殺人に至るまでの経過が興味深かったです。特に、女性教師を殺してしまった少年。あとのふたりは気持ちがわからなくもないんだけど、こいつの気持ちはわからない。というか、女性教師も……なんと言うのでしょうね。こわれちゃってますね。
こわれてる、なんてひとことで言うのは簡単ですが、そこにたどりつくまでがやりきれない。貫井さんのこのたぐいのサスペンスには、いつも引き込まれてしまいます。
④石田衣良「逝年」
「娼年」の続編です。
「女が年を取るということを成熟としてきちんと描ける、日本には数少ない男性作家のひとり」だそうで、ある面は当たっているのでしょう。
でもさ、この世界がこんなに美しいはずないよね。②で正反対のおどろおどろしい描写を読んだあとなので、よけいにそう思ってしまいます。
なんだかなぁ、女に媚びるような物語を書く男性作家って気がしなくもないのですが、ファンの方、ごめんなさい。偏見ですね。
⑤乃南アサ「家族趣味」
読むたびいつも、アサさんの感覚は非常に健全でステロタイプで、作家にしたら健康的すぎるなあと思うのですが、それだけに安心して読めるのでしょうか。
この短編集は「やりすぎの人々」がテーマだと思います。
たとえば、両親を名前で呼ぶ息子、浮気相手を夫と息子のいる家庭に連れて帰り、こっそり泊まらせて楽しんでいる妻、自分は自分で楽しくやっているようである夫。
そんな家庭を石田衣良さんが描けば、すべてを肯定するかもしれない。他人が横からケチをつけようとも、家族が満足していればそれでいいんでしょ? ですものね。が、アサさんはそんな家庭を破綻させてしまいます。
ま、たしかに、この妻はキモチワルイですが、作家さんの思想もいろいろだなぁ、なんて勉強にもなりました。どっちがいいわけでもなく、読者の趣味嗜好に合えばいいのですよね。
文句は言ってますが、読みたくもないほど嫌い(人気作家の中にも私には大嫌いな、というか、一度読んで二度と読みたくなくなった方は何人もいます、偏食ですから)ではないから、衣良さんだってアサさんだって、読むんですよね。
⑥群ようこ「挑む女」
群さんの場合は健康的というよりもひねくれチックで、そういうところは私に似てます。
四十代のお疲れ編集者。四十代家事手伝い、一度も就職したことのない美人。三十代主婦、夫の母との確執中。二十代のイケイケお姉ちゃん(イケイケは古いか)。
この四人の女性たちがイキイキ描かれ、リアリティにあふれていて、一気に読んでしまいました。四人の女がなにかしらに「挑む」というのも小さなことで、現実的でいいですね。
⑦永井するみ「悪いことはしていない」
田辺聖子さんがエッセイに書いておられたところによりますと、小説の主人公はあまり「よい子」にはしないほうがいいんだそうです。微量に「悪い子」のほうが、読者の共感を得られるとか。
そういう意味ではこの小説のヒロインはいい子すぎて、私は反感を抱きました。ひねくれ者ですから。
主人公の友達がブログに「職場の上司に迫られた」と書き、「それってプチ自慢?」などとコメントされてブログが炎上する。私も「勘違い男に口説かれた」なんてネタを読むと、自慢してない? って思ってしまうから、ありそうな話だなぁ。
というような、現代的なエピソードの多い楽しい小説ですが、キャラたちにちょっとイラつきました。
⑧沼田まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち」
「イヤミス」っていうのが流行ってるんですってね。なにも最近はじまったわけではなく、私は昔から大好きな「読んでいやーな気持ちになるミステリ」です。
沼田まほかるさんはその代表者のひとり。⑦とは逆で主人公は「悪い子」です。どうしようもない女です。その彼氏はさらにどうしようもない男で、読者に嫌悪感しか抱かせない。彼は彼女に献身的で、それが高じて高じて高じすぎて……なのですね。
これを「恋」だとは思わないけど、ひとつの「愛」でしょう。
主人公がいつまでたっても恋焦がれている過去の彼氏というのも、ろくでもないとんでもない男。こんな奴を恋しがる女性を描けるだけでも、この方はただものではないと感じました。
このストーリィには大阪弁はぴったりですね。泥臭いいやらしさを引き立てています。
⑨真梨幸子「みんな邪魔」
またまた「イヤミス」。この著者の方もそちらの代表のおひとりのようです。
⑧には哀切な情感が漂っていたのですが、こっちはもうもう、やな女ばっかり。よくもまあこれだけの人数のやな女を書けるものだ。真梨幸子さんはこの人物造形だけでも尊敬しますわ。
シルビアという女は人をマインドコントロールするのが得意らしく、彼女の嘘にエミリーが完膚なきまでにだまされる。アホちゃうかと思わなくもないものの、エミリーの気持ちもわからなくもなくて、怖いです。
ミレーユはまちがいなく性格破綻者で、そんな娘を心配している母が哀れ。他の女たちも、これでもか、とばかりにいやな女なのです。
原題は「更年期少女」だそうで、四十代、五十代の女たちが少女マンガのファンサイトで知り合い、ハンドルネームでつきあい、見栄の張り合いをして虚飾の宴をやっている。オバオタが増えている現代にはありそうな話ですね。
「もって他山の石とせよ」
はい、自分に言い聞かせておきます。
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