ブログパーツリスト

counter

« 92・BASEBALL KID'S | トップページ | 93・ラストクリスマス »

新選組!(ほんのジョークですが)

トシちゃんとハジメちゃん

①04/9/9

 「ちょっとした一幕」

 市中見回りから帰ってきた斎藤一が、怪訝な顔をしてしきりに首をひねっている。土方歳三はなんの気なしに声をかけた。
「ご苦労さん。どうした、奇妙な顔をして。なにかあったのか」
「いや、このごろよく会う娘がいるんだが」
「娘?」
「そうなんだ。いつごろからかは忘れたが、俺が見回りに出るとよく出くわす。私用で出かけるときにもたまに顔を見る」
「ふむ、それで?」
「その娘が近頃ひどく赤い顔をしているんだ。熱でもあるんだろうか」
「……それはなにか。おまえの顔を見ると赤くなるのか」
「そうかもしれない」
「綺麗な娘か」
「そんなところまでは見てないからわからん」
 赤い顔をしてるのは見てるんじゃねえか。顔立ちは見ていないとは、この男はどういう目をしているのだと、土方は呆れた。
「で、それがどういう意味なのかわからんのか」
「意味? 娘の顔が赤い意味か。だから、熱でもあるのかと」
「もういい、好きにしろ」
「なにか別の意味があるのか。土方さんにはわかるのか」
「もういいって」
 なんだかわからないがむかむかするので、土方は縁側で寝そべっていた若い隊士の腕枕を蹴飛ばした。わっ、と叫んで隊士が飛び起きる。
「副長! 副長のご面前で居眠りなどしまして……まことに、あの、まことに……ご無礼を……」
「いいさ。疲れてるんだろ。寝てろ」
「は、はあ」
 歩み去っていく土方の背後に、飛び起きた隊士と斎藤の会話が聞こえた。
「土方さん、なんか変だな」
「そうですかぁ。どうかされたんでしょうか」
「さあ」
 変なのはおまえのほうじゃないか、勝手にしろ、と土方はひとり毒づいたのであった。

続く

②04/9/17 

 「恋の道」

 おまえは恋をしたことがないのか、と土方は斎藤に尋ねた。ないなあ、が返事だった。
「知れば迷い、知らねば迷わぬ恋の道というが……」
「それは誰の言葉だ。聞いたことがないな」
「いや、俺だがな」
「土方さん?」
「いいんだよ、どうでも。にしたってよ、おまえって野郎は鈍感至極だ。相手の娘が気の毒になってくるよ」
「相手の娘なんてものはいないから大丈夫だ。俺からすれば土方さんの相手の娘のほうが気の毒だと思うがね」
「なんでだよ」
「おのれの胸に聞いてみればいい」
 ううっ、と土方は返答に詰まった。こほこほ咳をしてから、斎藤が見ている男に目を向けた。
「恋に迷うとああなる、のかな」
 視線の先をたどっていってみると、ほっそりと少年じみた姿がある。斎藤よりも年長なのだが、改めて考えてみてはじめて、ああ、そうだったか、忘れてた、となる彼は沖田総司。のほほんとした顔で若い隊士たちと冗談を言い合って笑っている。と、斎藤が言った。
「彼は恋をしているのか」
「いないのか」
「俺にはそうは思えん。八木家の娘はあきらかに彼に惚れてるようだが、沖田がなにをどう考えているのかはわからない。彼は謎だ。女以上に謎だ」
「おまえ……」
 ふたりの視線がからまり合う。
「実は案外……」
「案外、なんだろうか」
「いや、いいよ」
「土方さんはこの間からそればかりだ。言いたいことがあるならはっきり言ってくれ」
「いや」
 言いたいことがあるような気もするのだが、考えがまとまらないのでどうしようもない。斎藤は案外恋の道を知っているのかもしれない、と考えてみたり、まさか、あり得ない、と打ち消してみたりする土方だった。
「言いたいのはだな、今の俺たちには恋どころじゃねぇってことさ。そうだろ」
「その通りだ」
「わかればいい。しっかり励んでくれ」
「そのつもりだが」
 あんたはいったいなにが言いたいんだ、と見上げる斎藤に曖昧な微笑を投げかけてから、土方は沖田のほうへと近づいていった。

続く

③04/9/21

 「そして……」

 不純な動機なのは重々承知しているが、好奇心に勝てなくなって、土方は斎藤の率いる彼の部下たちとともに町に出た。あれだ、とそちらは見ずにしゃくった斎藤の顎の先には、頬をぽっと染めた美しい娘がいた。
「……もったいねえ」
「なにが?」
「おまえ、本気でなんとも思っていないのか。あの娘になんの気もないのか」
「気もなにも、知らない娘じゃないか」
「これから知り合うんだよ。最初は誰だって知らない同士だ」
「ふむ」
「いいんだな」
「だから、なにが」
 泰然自若の斎藤と、こういうときにはどうしても気もそぞろになってしまう土方と、土方が斎藤よりも十も年上だなどとは、信じない者が大勢いそうに思える。近藤勇にこんなところを見られたら、おまえはいい年していつまでそんななんだ、みっともない、と叱りつけられるであろうが、こればっかりは男の性だ、しようがねえんだよ、と土方は心でいいわけした。
「先に行ってろ」
「土方さん?」
「いいから行ってろ。俺はちと野暮用ができた」
 ため息ひとつ残して、斎藤が隊士たちを連れて行ってしまうと、土方は娘に近づいた。娘が一歩後退する。
「あ、あの……」
 怖気づいたのか顔色をなくしている娘を、土方はためつすがめつした。若いころはこんなことばっかりやってたっけな。久しぶりにこうして若い娘に近づいて声をかけようとしている。京の町では玄人の女だけを相手にしていたから、こんな行為は新鮮だった。
「あんな鈍感野郎はほっときな」
「あの……ええと……」
「あいつは斎藤一というんだが、知ってたか」
「はい、あの、お名前だけは」
「そうか。斎藤は仕事が忙しい。恋をしてる暇もないんだそうだ」
「……そうどすか。そんならうち……すんまへん。お仕事の邪魔になるんどすな。わかりました。もうこんなことはしまへん」
「俺だったらいいんだけどな」
「え?」
「ちょっと歩かないか。俺は暇なんだ」
「……けっこうどす」
「まあそう言わずに」
「あの、いったいどういう意味どすんやろか」
「あんたもなかなか鈍感だな。あんな奴のことは俺が忘れさせてやろうと言ってるんだよ」
「そんなん、けっこうどす。忘れんでもええんやもん。邪魔にならへんかったらええんどすやろ。二度とあの方に顔は見せんといて、胸のうちで想うてるだけにします。うちはそれだけでええんどす」
「うー……ん、そうなのか」
「おなごはそういうもんどす。ほんなら」
 腕が鈍ってきやがったかな、土方は苦笑した。素人娘にいきなりああ出るのはまずかったかもしれない。ま、いいか。ふられたのも久しぶりで新鮮だ。土方は娘が小走りで去っていったほうを見つめてから、早足で斎藤たちのあとを追った。
「おまえの邪魔は二度としないんだそうだ」
 やがて追いついた斎藤に、土方は言った。隊士たちにまでは斎藤と土方のさきほどの内緒話は聞こえていなかっただろう。やや離れて歩いていたのが好都合だった。
「土方さんはあの娘を追い払いにいったのか」
「そうだ。よけいなお世話だったか」
「べつだん邪魔になるわけでもないが、俺はどっちでもいい」
「まったく、つめたい男だね」
「そうかもしれない」
 うなずいておいて、斎藤は皮肉な笑みを見せた。皮肉と感じるのは、あるいは土方だけだったかもしれないが。
「あんたは意外に暇人なんだな」
「俺はおまえのために……いいよ。なんとでも言え」
 実はなにもかも察してやがるんじゃないのか、こいつ、と斎藤の顔を凝視してみたが、その澄まし顔からはなにひとつ読み取れなかった。

おしまい

著者の言い訳

あのですね、これはですね、私がかつての大河ドラマで(そう言えるほどにたくさん見たわけではないのですが)もっとも好きだった「新選組!」のトシちゃんとハジメちゃんの寸劇です。私が勝手に書いたものです。

土方歳三は山本耕史、斎藤一はオダギリジョー。彼らの声で彼らの演技で彼らのルックスで、こんなシーンを演じてほしいと、妄想して当時、書いたのでした。

もう六年も前になるのですね。時のたつのはなんと早いものだと、ありふれた感慨を抱きつつ、どうも失礼致しました。

Cocolog_oekaki_2010_09_03_13_42

« 92・BASEBALL KID'S | トップページ | 93・ラストクリスマス »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1286274/36517055

この記事へのトラックバック一覧です: 新選組!(ほんのジョークですが):

« 92・BASEBALL KID'S | トップページ | 93・ラストクリスマス »

2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ