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mixiリレー小説

「カレーライス」

hiro☆ミ&なべ&あかね

足元に猫がちょこんとすわって、包丁を動かしているハルカを見上げている。キッチンに入ってきたタケルがハルカに言った。
「ハルカ、なんで泣いてるの?」
「玉ねぎを切ってるからに決まってるでしょ。タケルも手伝ってよ」
「玉ねぎで泣いてるのか。ああ、びっくりした。ニンジンとじゃがいももあるんだな。カレーライス?」
「そうだよ。カレー、一緒に作ろうね」
「俺は料理は下手だけど、ハルカの指示に従いまーす」
「あたしも上手じゃないけど、一緒に作ったらなんとかなるさ。タケルはじゃがいもの皮むきをして」
 じゃがいもってでこぼこしてるよぉ、などと文句を言いながらも、タケルもハルカとともに働きはじめた。
(あかね)

じゃがいものでこぼこに文句を言ってるタケルがハルカにはちょっと滑稽に映った。
でこぼこしてるのはじゃがいもだけじゃなかったから。
身長差もでこぼこ、更に二人の関係も世間からはでこぼこと言われていた。
でも、二人にはそんなことどうでもよかった。
(hiro☆ミ)

二人は一緒にいるだけで幸せだった。
二人が世間からどんな目で見られようとも。
周りからの目が嫌で、自分たちとは無縁の地に辿りついた。
ようやく、ようやく手に入れた、二人だけの、幸せ。
でこぼこだと言われようと、なんだろうと、これだけでいい。
タケルとハルカは日々の何気ないこの一時の幸せをかみしめていた。
(なべ)

なんだって世間からでこぼこだなどと言われるのかといえば、ハルカは一流大学卒の通訳で、タケルは高校中退フリーターだからだろうか。その上、タケルは相当に背が高く、ハルカは小柄だからだろうか。
しかし、そんなものは当人たちが気にしなかったらそれですむ。無関係な他人がとやかく言うのは下らないお節介だ。
「タケル、じゃがいもの皮がちゃんと剥けてないよ」
「いいじゃん。煮込んだら皮なんかついてても平気だよ」
「そうだね。あ、まだルーは入れたら駄目」
「まだなのか」
「もっと煮込んでからね」
大騒ぎしながらもカレーが完成しつつあったころ、インタフォンが音を立てた。
「客じゃない? 夕食どきに訪ねてくるとは、俺の友達かな」
「カレーだったら何人いてもへっちゃらだし、ごはんもたくさん炊いてるから大丈夫。タケル、出て」
「はいはーい」
こういう鷹揚なところも、俺がハルカを大好きな一因だな、などと考えつつ、タケルがドアを開けると、予想通りに友達が立っていた。
「カレーの匂いがする。タケル、俺、金欠なんだよ。俺にも食わせて」
「いいよ。入れよ」
ハルカはああ言っていたのだし、怒りはしないで歓迎してくれるだろうと、タケルは友人のコウジを迎え入れた。
(あかね)

「はいはい、お邪魔しますよっと。」
コウジは当たり前のようにドスドスと入ってくる。
「はーい、いらっしゃ・・・いっ!」
ハルカはコウジを見ると硬直した。
「おっ、ハルカ。おひさー。」
コウジは軽いあいさつを交わす。
ハルカはそれに応じず、わなわなとしている。
と思うと、俺の方へと向かってきた。
「ちょっと!なんでコウジなんていれたのよ!私があいつ嫌いなのしってるでしょ!?」
しまった。そうだったか。
なんとか取り繕うとするが、ハルカには逆効果だった。
「もう知らないッ!タケルの分のカレーはなしでいいわねっ!」
「え…!?あ…ちょっ…」
話の途中でハルカはカレーの仕上げにいってしまった。
コウジはいつもタイミング悪い。
昔からそうだった。
うなだれていると、コウジが話しかけてきた。
「ほんと、こうしてるとお前ら恋人みたいだよな。」
(なべ)

コウジの言葉には厭味とも皮肉とも取れる棘を含んでいた。
少なくともハルカにとっては‥
「嫌いなのしってるでしょ!?」とタケルに言いながら、コウジの顔を見るとどうしてもコウジと過ごしたあの時に引き戻されてしまう。
忘れたくて忘れたくて仕方のないあの時に。
何も知らずに二人の家にコウジを迎え入れたタケルにも、当たり前のように入ってくるコウジにも、そして容易に過去に引き戻されてしまう自分にもハルカは苛立っていた。
(hiro☆ミ)

「恋人みたいってなんだよ。ハルカは俺の恋人だよ」
ハルカの態度の意味がわからず、コウジの言葉の意味もわかりにくく、タケルはコウジに言い返した。
「けーっだ。似合いもしないくせに」
コウジはせせら笑うように言う。タケルの頭の中がかーっとなってきて、激しい調子でコウジに言った。
「似合うか似合わないかなんて、おまえに決めてもらわなくてもいいんだよ。ハルカがなんでおまえを嫌いだって言ってるのかは知らないけど、ハルカが嫌いな奴は俺も嫌いだ。帰れよ」
「……ガキみたいに、そういうことを言うわけ? ハルカには弱いんだよな、タケルは」
「好きなんだから当たり前だろっ。ハルカを呼び捨てにするなっ!!」
 軽蔑のまなざしのようにも見える目つきでタケルを見つめ、コウジはなおもなにか言おうとしている。キッチンからはハルカの声が聞こえてきた。
「ああっ、もうっ、カレーが焦げちゃったじゃないのっ!! にゃん太郎、レンジに乗ったら駄目っ!! あ、ああっ、お鍋がっ!!」
 なんだってこうなるのっ、ではあったのだが、タケルはコウジをその場に残し、鍋がいったいどうなったのかを見ようと、キッチンへ走りこんでいった。
(あかね)

キッチンからは、カレーの香(かぐわ)しい香りと、香(こう)ばしい焦げた匂いが漂っていた。
タケルにはハルカは涙目のように見えた。
コウジの件もあり、カレーの件もあり、ダブルパンチでショックだったのかもしれない。
タケルはひとまず、ハルカの安否を図ることにした。
「ハルカ、大丈夫か?俺、なんも知らなくて…ごめん」
……ジロリ、とハルカはタケルを見る。
ハルカが嫌いなら、俺もコウジは嫌いだ。帰ってもらうよ。ごめん。」
ごめん、とタケルは繰り返した。
ハルカはタケルを見ると、寂しそうな顔を一瞬見せる。
「ほんと、タケルは私に謝ってばかり。昔も今も…」
ハルカはうつむいてしまう。
「ご、ごめんっ。お、おれ・・・ッ。あ、またごめんっていっちゃった。ごめん。って、あ。」
タケルは、あたふたしながらハルカに元気をだしてもらおうと気の利いたセリフを言おうとするが、染み付いた言葉が口から離れていかない。
やってしまったと思ったタケルは、目を泳がせながら頭をかいた。
ハルカはそんなタケルを見て笑う。
「ははっ。ごめんごめん。嘘だよっ!騙されたっ?!気にして無いよ。大丈夫っ!」
(なべ)

まったくさ、人間ってバッカみたいだよな。
一部始終を観察していた猫のにゃん太郎は、ハルカが笑い出したので安心して笑っているタケルを見て、こっそりため息をついた。
子猫のころにハルカに拾われて以来、十年ばかり同居しているにゃん太郎は、ハルカとコウジの関係も知っている。コウジは人間の言葉でいうところの、ハルカの「モトカレ」ってやつなのだ。
昔はコウジがハルカのマンション、にゃん太郎にとっては「俺の縄張り」であった部屋に遊びにきていて、にゃん太郎を見るとハルカには内緒で、しっぽをつかんだり、首根っこをぶら下げたり、果ては軽く蹴飛ばしたりもした。
プライドの高い猫のオスとしては、そんなふるまいをする人間は大嫌いだったのだ。
そのくせ、コウジはハルカのいる場所では、甘い声を出してにゃん太郎を可愛がってるふりをする。にゃんちゃーん、などと言って撫でようとするコウジの手に猫パンチを食らわせてやったりした。
「俺、にゃんこに嫌われてるよ」
「にゃん太郎ったら困った子だね。コウジはあたしの彼なんだから、にゃん太郎も仲良くしなくちゃいけないのよ」
やなこったっ!! とにゃん太郎は言ったのだが、人間には猫の言葉は通じないのだった。
いつの間にやらハルカはコウジと別れ、コウジの友達のタケルとつきあうようになって、この家で同棲している。
人間とはややこしい生き物で、男と女にしても猫のように単純ではないのだろう。十年も生きていてずっとハルカと暮らしているにゃん太郎には、ハルカの気持ちはわかるようになってきている。
さっきはキッチンで泣いていたハルカをなぐさめてやろうと、ガスレンジに飛び乗ったら、熱い鍋に毛がくっついて焦げそうになり、ハルカが大慌てでにゃん太郎を抱き上げた。
そのはずみで鍋が流しに落っこちて、にゃん太郎の嫌いなカレーの匂いが漂っているのだ。猫の毛は焦げずにすんだのだが、かわりに鍋が焦げたらしい。
「もう食べられないね」
ハルカが言い、タケルも言った。
「レトルトカレーもあるだろ。それでいいよ」
タケルはにゃん太郎にも言った。
「これ、おまえが食うか?」
「にゃおーっ!!」
そんなもん、食わねえよっ、と言ったにゃん太郎の返事は、むろん人間たちには通じるわけもない。なんでおまえまで怒るの? とタケルはきょとんとした。
(あかね)

コウジは二人と一匹のやりとりを退屈そうに眺めていた。
タケルは相変わらず、鈍感だ。
ハルカは相変わらず、お人好し。
あの猫は相変わらず、人に懐かない。
変わったというのは、タケルと俺との立ち位置だけ。
元々は俺のポジションだったハルカの彼氏役。
それが変わっただけだ。
今度は俺が二人を傍観する役目に変わっただけ。
俺よかましな奴で良かったな、ハルカ。
正直なハナシ、内心おれはホッとしている。
ある程度、心知れた奴がハルカと一緒にいてくれていることを。
俺と付き合っていた時なんかは、俺が居なけりゃ猫しか話しかける奴も居ない奴だった。
いるとすりゃ、たけるくらいなもんで。
俺かタケルと交流が切れたら、もうあいつは外との交流なくなるじゃないかくらいのもんだった。
そんなハルカが彼氏役の俺にべったりなものも必然。
俺が鬱陶しくなったのも必然。
わかれたときはハルカのことを正直、心配していたもんだ。
だが、タケルはハルカの心知れた奴で、それが一緒にいてくれてる。
本当、このことは俺にとって救いなんだが。
今日も気になったから、来てみたけど、まぁ大丈夫そうだわな。
「んじゃ、お二人さん、俺はおいとまするさね。」
(なべ)

あいつを見ていると心が乱れるから、追い出してよ、とハルカはタケルに言いたかった。なのに、コウジが帰ると言い出したら、思わず言いたくなった。
もう帰るの? と言いそうになった口をからくも閉ざし、ハルカは言った。
「コウジくん、あたし、なんだか失礼だったね。ごめんね」
「コウジが悪いんだから、ハルカが気にしなくてもいいじゃん?」
なんにも知らないタケルは言い、コウジは軽く言った。
「俺、なんか悪いことしたか、タケル?」
「……えーと……別にコウジは悪くはないかな。ね、ハルカ?」
「そうだね。悪いのはにゃん太郎かも」
なんで俺が悪いんだ、と言いたげに、不満そうな顔をしているにゃん太郎を見て、三人して笑う。猫だって人間の言葉をすこしは理解している。にゃん太郎は表情豊かで頭のいい猫なのだ。
コウジを帰らせるべきか、タケルはなんと言うだろう?
だいたいからして性格が暗いハルカには、友達も少ない。ここにいる人間ふたりと、猫一匹の男以外には、心から親しめる相手はいない気がする。
だけど、タケルとにゃん太郎はともかく、コウジとはもう親しくしてはいけないのだ。それがコウジへのけじめ、タケルへのけじめでもあるはず。
「うん、じゃあね」
言ったハルカを、コウジは深い意味でもありそうなまなざしでじっと見ていた。
(あかね)

なんだ、強くなったんじゃないか。
コウジは思う。
前のお前だったら、『ごめんコウジ!やっぱり一緒に御飯食べよ!』とか、言ってたんだろうけどな。
お前がそれだけ強くなったんなら、俺もやっと安心してここを離れられるよ。

「なあ、ふたりとも。」

コウジにはいつものような陽気さはなく、うつむいていた。
タケル、いつもと違う調子に首を傾げる。
ハルカはようやく自分のけじめがついたと思っていた時だ。
不意のコウジの一言がハルカを驚かせた。
「なっ、なによっ。」
コウジはハルカの受け答えには直ぐに反応を示さずうつむいていたが、ようやく一言紡ぎ出す。
「今日、此処に来たのは他でもない。別れを言うためなんだ。」
ハルカの心臓の鼓動が早くなる。
頭が真っ白になる。
「おいおい、いきなりきて、いきなり別れなんだなんて無粋にもほどがあるぞ。」
タケルがハルカとコウジの間に入って言う。
ハルカは何かを言わなくてはいけないと思うのだが、その何かを考えられる頭でなかった。真っ白な頭からは何も言葉が浮かんでこなかった。
「いやな、おれさ。このマチから出ることにしたんだ。この街、好きだったんだけどな。お前らもいるしさ。」
コウジは今まで見せたことのないはにかんだ笑顔を見せる。
「お前らがきてからほんと、退屈しなかったよ。昔の馴染みでお前らが俺を訪ねてきたときはホントにビックリしたけどよ。今となってはほんと、お前らが俺を訪ねてきてくれてよかったとおもってる。」

コウジはハルカとタケルの親友だ。地元が同じで、同じ学校で、同じ時を過ごしてきた。幼い頃から3人でいつも行動してきた。周りの大人がいろいろな人と関わりなさいと言われようと、いつも一緒だった。コウジが大人になり、地元を離れるとなったとき、ハルカは大泣きしたものだった。
コウジがいなくなり、ハルカとタケルは恋人になった。周りからはよく言われない関係だった。周囲からの目が嫌で二人も地元を飛び出した。コウジには昔の馴染みで、村から離れて頼りになりきりだった。また、昔のように3人はいつも一緒だった。
ハズだった。

「どうして…どうしてまたいなくなっちゃうの。」
真っ白な頭の中、ハルカは精一杯の言葉を振り絞る。
(なべ)

頭の中に点滅しているのは、過去のワンシーン、ワンシーンだ。真っ白になったハルカの脳裏に、色鮮やかに思い出の光景が映し出されていた。
子供のころからずっとずっと一緒にいて、最初はコウジと、続いてタケルと恋人同士になって、ハルカはコウジを裏切った形になった。
タケルはそんなことはなにも知らない。コウジにしても面と向かってハルカを責めもせず、今日にしてもハルカとタケルを気遣って訪ねてきてくれたのだろう。なのに、あたしは……ハルカは言った。
「嫌いだなんて言ってごめんね。あたしはコウジも好きだよ。タケルのほうがずっとずっと好きだけど、っていうか、タケルは彼氏として、コウジは友達として好き」
「そりゃそうだよな」
タケルも言った。
なんとなく変な雰囲気だとは思うのだが、タケルにはその意味がよくはわからない。昔から仲のよかったコウジが遠くに行くと知って、ハルカはショックを受けたのだろう。
その程度はタケルにもわかるし、タケルだってコウジがいなくなるのは寂しい。しかし、ハルカのショックは激しすぎはしないのだろうか。顔色が真っ白になって、今にも気を失いそうな顔をして、にゃん太郎をぎゅうぎゅう抱きしめている。
「うまいこと言っちゃってさ。俺はハルカには嫌わてるんだろ。それでいいよ。好きな男ってのはひとりだけでいいんだからさ」
コウジは言い、タケルは不思議な気分で彼を見つめた。
こいつもなんだか変だ。悪ぶってるのか? ハルカの態度もコウジの態度も、タケルには読み切れない。タケルはひたすらに頭を悩ませていた。
(あかね)

そんなタケルを見ながらハルカは「その鈍感さが憎めないんだよな~」と彼との安らぐ日常をとても愛おしく感じていた。
「これからはコウジのことは思い出として胸にしまっておいて、このタケルとの関係を大切にしていこう」と決意をし、抱いてたにゃん太郎を離しタケルに抱きついた。
「なんだよ~、ハルカ~」とタケルは相変わらず鈍感に、でも今までになくそんなハルカを受け入れ「ハルカ、離さないからな」と強く抱きしめた。

全てを見ていたにゃん太郎は、そんな二人を温かくも冷やかしとも取れる目で「にゃん(勝手にしてくれ)」と鳴き、その場を背にした。
(hiro☆ミ)

END

mixiにて、三人で書いたリレー小説です。
hiro☆ミさん、なべさん、ありがとうございました。
また書きたいですね。

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