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フォレストシンガーズ小説について

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「みなさまこんばんは、金子将一です」
「こんばんは、徳永渉です」
「著者から指名されまして、徳永と俺とがメインキャラクターの紹介をすることになりました。このストーリイの主役は……」
「俺です」
「おまえじゃないだろ。おまえの永遠のライバルたちだよ」
「俺の紹介はしてもらえないんですか」
「してやろうか。主役たちを差し置いておまえがトップってのはなんだけど、してやらないと寝るだろ。どこからはじめようか」
「トップは高倉さんじゃないんですか。そもそものはじまりは高倉さんですよ」
「そうだな。高倉さんだ。今から数年前、高倉誠は東京のとある大学に入学した。とある大学の合唱部にも入部した。体育会系、封建的体質を持つとつとに名高い合唱部は、男子部、女子部と分かれていて、高倉さんは男なのだから当然、男子部に入部した。彼が二年生のみぎりに、金子将一も合唱部に入部してきた。徳永、寝てないか?」
「俺はまだ出てこないんですか」
「あと二年待て。金子将一とは俺。俺は子供のころからの友であった皆実聖司とともに、合唱部に入部して奔流にもみくちゃにされる。あのころの合唱部はおまえたちが入部したころよりもさらに、体育会体質、封建的体質が激しかったんだよ。俺が一年生の年の四年生男子ときたら、ここは合唱部ではなくて、荒くれ男のそろった剣道部か柔道部か……とぼやきたくなるような部だった。歌とは楽しいものだと軽く考えていた俺は、聞くも涙、語るも涙の経験をいやというほどした」
「金子さん、あなたの悪い癖ですね。じきにそうやって自分のことばっかり話したがる」
「俺の話もしないと続きが言えないんだよ。俺には妹がいて……なにか言ったか? シスコン?」
「金子さんの妹さんが合唱部に入部するのは、あと三年ののちではないんですか」
「そうだった。主役たちにつなげないとな」
「主役は俺……はい、どうぞ」
「俺が三年生になった年に、主役たちが登場してくる」
「二年生の年は?」
「二年生はいいんだよ。とりたててなにもなかったんだから」
「言いたがらないのは、なにかあったからじゃないんですか」
「ないよ。遮るな。で、話を戻しますと、物語の主役となる本橋真次郎、乾隆也、山田美江子。彼らと同年の、ただいまここで俺の話に嘴を突っ込んでいる徳永渉。その四名の、輝ける歌の才能の持ち主たちが、合唱部に入部してきた」
「山田さんも歌の才能は輝いてましたか」
「うん、率直に言うと彼女の歌の才能はさほどでもなかったんだが、彼女には別種の才能があった。徳永、おまえは三沢じゃないんだろ。先走るな」
「三沢が出てくるのもまだ先ですよ」
「本筋に戻そう。本橋、ではなく、徳永をはじめとする四名が合唱部に入部してきた年の男子部キャプテンは、高倉誠氏だった。高倉さんは新入部員たちの歌を吟味し、本橋と乾に目を留めた。そこには高倉さんの炯眼が働いていた。高倉さんは本橋と乾に、今年の夏の合唱部主催コンサートで歌えと命じた。それが物語が回転しはじめるきっかけとなる。徳永、起きてるか?」
「あのときの俺はゆえもなくむしゃくしゃしてましたね。カワズどもがちっぽけな井戸の中で、なにをざわめいて騒いでるんだよ、ってね。負け惜しみですよ。認めてますよ」
「考えようによっては、だからこそ現在の徳永渉があるんだ。おまえが合唱部の一番星だったとしたら……?」
「なるほど。参りました」
「キャプテン高倉さんに大抜擢された本橋と乾は、徐々に生来の才能を花開かせていく。歌も人間としても未熟者ではあったけれど、興味深い奴らだったよ」
「金子さんはずいぶんと高みから見下ろしてたんですね」
「いいんだよ。俺は語り部なんだから。俺はこの際、傍観者的立場で話してるんだ」
「了解。奴らのルックス描写はしないんですか」
「山田さんは中肉中背だろうな。理知的でいながら愛らしさも併せ持つ、意志の強さがおもてにあらわれている女の子だった。現在ではそこに大人の女性の魅力が加わった」
「本橋や乾は?」
「男のルックスを描写する能力はない。おまえがやれ」
「そうですか。では、俺が金子さんになりかわりまして。本橋は背は高い。金子さんほどではないが、俺と同じ程度の長身です。体格も俺に似た感じか。俺よりもさらにがっしりしてますね。学生時代はまだまだひょろっとしてましたけど、引き締まった筋肉のついたいいボディをしてましたよ。ただし、顔は不細工すれすれ」
「不細工ではないだろ。そこそこの顔をしてるぞ、本橋は」
「見解の相違です。あいつはぎりぎりで醜貌となるのを免れたって顔ですよ。おまけに味覚音痴のでくのぼう。まともに他人と議論をする前に、腕力を使おうとする原始人」
「……見解の相違がすぎる。本橋は可愛い奴だよ。単純で……いや、ルックス描写からはずれてるじゃないか。乾は?」
「乾の身長は本橋や俺よりも若干低く、本橋が乾当人に言っているのを聞いたところでは、へなちょこした身体つきだそうです。本橋もごく稀にはうまい形容をしますね」
「へなちょこも言いすぎだけど、乾は細いよな。筋肉のつきにくい体質だって、学生時代は悩んでたよ」
「栄養素が舌に注ぎ込まれて、筋肉にはならないんですね。あいつはたんぱく質を摂取しても脳の妙な部分に回ってしまって、当人の望む体格にはならない」
「体質ってのはあるんだよ。おまえも相当に口に栄養素が回ってるはずだけど、筋肉もそこそこはついてるよな」
「その言葉、おまえをあなたに替えて、そっくりそのままお返ししますよ」
「話しがそれてる。軌道を修正しよう。高倉さんに抜擢されて、なおいっそう合唱部の輝ける星となった本橋と乾は、ほどなく校内全般で有名人となっていく。彼らのそういったところが、回りの人間関係をぎくしゃくさせる一因となったりもした。ぎくしゃくではなく、正攻法で対決したのが徳永渉だ」
「高倉さんの在校当時には、星さんという高倉さんと同年の方がいらしたんです。星さんはかなりかっこよかったんですが、星さんが卒業なさったあとの男子部の一番星は金子さんでしたね。金子将一ファンクラブもありました」
「あれはだな……針小棒大だ」
「そうですか。そこもまた見解の相違ですね」
「そうして本橋と乾は我々の母校のスターとなっていき、彼らが二年生になった年に、本庄繁之、小笠原英彦が合唱部に登場してくる。本庄と小笠原のルックス描写は?」
「男のルックス描写って、やってて虚しいですね。本庄はもっさりで、小笠原は土佐の闘犬でしょう」
「小笠原は見た目は闘犬じゃないんだが、事実、そういった気性の持ち主ではあったな。本庄ではなく、小笠原がリリヤと……ああ、私の妹、金子リリヤは本庄、小笠原と同年です。この年に女子部に入部しました」
「リリヤさんはきわめつけの美少女です」
「うん、それが今では……リリヤも脇役なんだからいいんだよ。本庄と小笠原は本橋、乾、徳永ほどの才能は持っていなかった。その年には俺は四年生になり、キャプテンとなったんだが、本庄や小笠原には歌の方面ではなく、人間性に興味を持ったよ。本庄はリリヤと……小笠原はたこ焼き事件もあったしな」
「リリヤさんの話題となると金子さんの口調が濁りますが、たこ焼きね。小笠原はね……はい、続きをどうぞ」
「そしてその一年後、三沢幸生、木村章も合唱部に入部してきて、主役たちが出揃った。俺はすでに卒業していて、渡辺という男がキャプテンとなっていた」
「渡辺さんはいいんですけど、溝部がね……」
「先輩を呼び捨てにするな」
「いいんですよ。溝部は溝部です」
「この調子で徳永は、俺のいなくなった合唱部に悶着を起こしていた。渡辺は大変だったんだろ」
「そのようですね」
「さらにその一年後、木村章は大学を中退し、本橋がキャプテンとなり、乾が副キャプテンとなり、徳永は彼らの……」
「合唱部ナンバースリー」
「おまえは本橋や乾とは別種の存在だったんだけど、曇った目の者には見られなかったんだよ」
「金子さんの目には曇りが一点もないんですね」
「本橋真次郎、乾隆也が四年生の年に、小笠原、本庄、三沢を誘って五人でフォレストシンガーズを結成した。徳永は言った。十本の脚がこんがらがって倒れないといいけど……だったな。おまえも変わってないよな」
「金子さんもね」
「フォレストシンガーズは長らくアマチュアだった。金子将一も徳永渉もプロシンガーを目標にしていたものの、彼ら以上に長らくアマチュアだった。アマチュアだった時代に小笠原がフォレストシンガーズを脱退して、木村章が小笠原の代理として参加した。山田美江子はフォレストシンガーズのマネージャーとなった。そして、フォレストシンガーズも金子将一も徳永渉も現在に至っている」
「その数年間ははしょるんですか」
「そこがこの物語なんだから」
「学生時代のストーリィもありますけどね」
「あまりに詳しく話すと関心が削がれるだろ」
「この会話はあらすじにもなってないような……個人的見解の相違に終始していませんか」
「俺の主観的見解に、おまえが皮肉突っ込みをやっていたにすぎない気もするよ」
「ま、金子さんや俺の責任ではないでしょう」
「なにせ……だからか? それを言ったらおしまいだろ」
「誰かさんに気に入られているようですから、甘受しましょう」
「だな。そういうわけで……」
「ところで、金子さん?」
「なんだ?」
「東京都内にある大学なんですよね。マンモス大学なんですよね。学部も学生数もきわめて多い。普通、そこまで巨大な大学となると、いくつかの学部ごとに敷地が分かれていませんか」
「それも言ったらおしまいだよ」
「承服しがたいな、俺は……なにせ……」
「ああ、なにせ……な」
「……あとは秘密裡に話を進めましょう。俺たちはなにせ、誰かさんの意のままに動かされている……ああ、それも言ったらおしまいだ」
「よって矛盾も……言うな、徳永」
「言ってるのはあなたでしょう」
「言わせて……おしまいだ」
「はい、おしまいにしましょうか」
「では、おやすみなさい」
「寝てはいけませんよ。読んでいただかなくては」
「はい、では、問題点も多々あるでしょうけど、見て見ぬふりも……」
「では、よろしくお願いします」
「三沢と木村のルックス描写を忘れてないか」
「あいつらはちびでガキです」
「……ごめんな、三沢、木村」
「金子さん、あとは酒でも飲んでふたりきりで……」
「そうしよう。ではでは……失礼します」
「……だからね……」
「うん……だからな……」

というような小説を、「茜いろの森」で連載しています。

遊びにいらしてくださいね。

http://quianred.blog99.fc2.com/?all

ここが「茜いろの森」です。

 

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